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新潟地方裁判所 昭和61年(わ)179号 決定

少年 N・G(昭43.1.19生)

主文

本件を新潟家庭裁判所に移送する。

理由

一  本件公訴事実は、

「被告人は

第一、昭和61年2月22日午後8時45分ころ、業務として、普通乗用自動車を運転し、新潟市○○町×丁目×番××号付近道路を○○方面から○○方面に向かい進行するに当たり、同所付近は、右方に曲がる緩やかな上り坂となつており、進路前方の見とおしが困難であつた上、公安委員会が最高速度毎時40キロメートルと定めていたのであるから、これを遵守するとともに、絶えず進路の安全を確認して進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、漫然時速約80キロメ一トルの高速で進行した過失により、折から対向車が右折進行しようとしているのを前方約40.4メートルの地点に初めて発見し、衝突の危険を感じて右に転把するとともに急制動の措置を講じたが、ハンドル操作の自由を奪われて自車を右前方に暴走させた上、道路右側の建物に衝突させ、よつて、自車に同乗中のA(当18年)に対し血気胸・肺挫傷の傷害を負わせ、同月23日午前零時40分、新潟市○○町×番地××○○病院において、同人を右傷害により死亡するに至らしめた

第二、公安委員会の運転免許を受けないで、かつ、酒気を帯び、呼気1リットルにつき0.25ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で、同年5月10日午前4時25分ころ、新潟県新発田市○○町×丁目×番××号付近道路において、普通乗用自動車を運転した

第三、前記第二記載の日時・場所において、業務として、前記車両を運転し、○○駅方面から国道×号線方面に向かい進行するに当たり、同所は公安委員会が最高速度毎時40キロメートルと定めていたのであるから、これを遵守するとともに、前方を注視し進路の安全を確認して進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、カーステレオの音量調整に気を取られ前方不注視のまま漫然時速約80キロメートルの高速で進行した過失により、自車と同一方向に進行中のB運転の普通貨物自動車を前方約49.7メートルの地点に初めて認め、直ちに急制動の措置を講じるとともにハンドルを右、左に転把して衝突を避けようとしたが及ばず、自車の右前部を同車後部に追突させ、よつて、同人に全治約2週間を要する頸部捻挫の傷害を負わせた

ものである。」

というのであつて、右各事実は、当公判廷で取り調べた関係各証拠によつて、すべてこれを認定することができる。

二  そこで、以下、被告人の処遇について検討するに、関係各証拠によると、次の事実を認めることができる。

1  被告人は、昭和59年2月17日に自動二輪車の運転免許を取得して運転するようになつたが、同月25日に定員外乗車により、同年6月7日に制限速度違反(時速27.8キロメートル超過)により各検挙され、その結果30日間の運転免許停止の行政処分を受けた(被告人は、右の制限速度違反事件について、新潟家庭裁判所で講習を受けて不処分となつた、旨供述している)。

2  被告人は、同61年1月30日、普通自動車の運転免許を取得して、その後毎日のように運転をしていたところ、公訴事実第一のとおり、同年2月22日夜、友人を乗せて海岸道路方面に遊びに行く途中、左右に緩やかに曲がり、上り坂になるなどのため、進路前方の見通しが困難であり、かつ、制限速度も毎時40キロメートルと定められている道路を毎時80キロメートルもの高速で走行させるうち、折から対向車が右折進行するのを約40メートル先になつて初めて気付き、同車との衝突を避けるため、急制動の措置をとるとともに、ハンドル操作で同車の右側から通り抜けようとしたが、ハンドル操作の自由を奪われて、自車を右前方に暴走させ、道路右側の建物等に激突させ、よつて、助手席の同乗車を死亡させる交通事故を起こした。

3  被告人は、右事故につき取調べを受け、業務上過失致死罪として、同年3月18日、新潟家庭裁判所に事件送致され、新潟家庭裁判所は、右事件につき刑事処分相当として、同年4月17日、これを検察官に送致する決定をした。

4  被告人は、右事故により運転免許1年間停止の処分を受け、また、刑事処分も決まつていない状況にあつたのに、その事故のわずか2か月余りのちに、夜遊びをして飲酒した折、酒気帯び・無免許で、女友達を送り届けるため友達の乗用車を借りて運転し、その帰路、再び制限速度毎時40キロメートルの道路を毎時80キロメートルもの高速で運転し、その際、カーステレオの音量操作に気を奪われて前方注視を怠り、先行車の存在に50メートル位に接近して初めて気付き、直ちに急制動の措置を取るとともにハンドル操作をして衝突を避けようとしたものの、これを果たせずに追突させ、よつて、同車の運転手に怪我をさせるという公訴事実第二、第三の犯行に及んだ。

5  右の事件も、捜査が遂げられて、新潟地方検察庁から、同庁に処分未済の前記業務上過失致死の家裁逆送事件があるとの参考意見が付されて、新潟家庭裁判所に送致され、同家庭裁判所は、同年6月16日、これを検察官に送致する決定をした。

6  なお、被告人は、これまでに検挙されなかつたものの、かなりの高速度で車を運転することがままあつた。

以上の認定事実によれば、公訴事実第一の無謀な高速運転による人身(死亡)事故を起こしながら、これを省みることなく、安易に公訴事実第二の犯行に及び、更には、公訴事実第三の前同様の過失態様の人身事故を繰り返した被告人の刑事責任は誠に重大であり、被告人を実刑に処して、これを明らかにすることも十分必要と考えられるところであるが、ただ、なにぶん本件各事件は、被告人が18歳になつて間もなくのそれであり、交通事犯以外には前科前歴もなく、交通事犯については、これまでの行状等をも考え合わせると、かなり専門的な矯正教育を必要とするものと認められる(被告人は、当公判廷において、今後自動車の運転をしない旨誓約しているところではあるが、被告人は18歳の少年であつて、これまでの被告人の自動車との関わり方からすると、被告人が今後自動車を運転する可能性は否定できない。)ところ、これまでに被告人が十分な保護処分を受ける機会があつたとはいえないので、本件については、刑事処分に付するよりは、この際、少年保護事件として処理し、専門的な矯正教育を受けさせるのが、少年法の目的に添うものと認められるので、少年法55条を適用して、本件を新潟家庭裁判所に移送することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 奥林潔)

〔参考〕 受移送審(新潟家 昭61(少)2062号 昭61.11.25決定)

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(罪となるべき事実)

少年は

第1、昭和61年2月22日午後8時45分ころ、業務として普通乗用自動車を運転し、新潟市○○町×丁目×番××号付近道路を○○方面から○○方面に向かい進行するにあたり、同所付近が右方に曲がる緩やかな上り坂となつていて、進路前方の見通しが困難であつたうえ、公安委員会により最高速度毎時40キロメートルと定められていたのであるから、これを遵守するとともに、絶えず進路の安全を確認して進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、漫然時速約80キロメートルの高速度で進行した過失により、折から対向車が右折進行しようとしているのを、前方約40.4メートルの地点に初めて発見し、衝突の危険を感じて右に転把するとともに急制動の措置を講じたが、ハンドル操作の自由を奪われて自車を右前方に暴走させたうえ、道路右側の建物に衝突させ、よつて、自車に同乗していたA(当時18年)に対し、血気胸・肺挫傷の傷害を負わせ、同月23日午前0時40分、新潟市○○町×番地××○○病院において、同人を右傷害により死亡するに至らしめた

第2、公安委員会の運転免許を受けないで、かつ、酒気を帯び、呼気1リットルにつき0.25ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で、同年5月10日午前4時25分ころ、新潟県新発田市○○町×丁目×番××号付近道路において、普通乗用自動車を運転した

第3、前記第2記載の日時・場所において、業務として司記載の車輛を運転し、○○駅方面から国道×号線方面に向かい進行するにあたり、同所が公安委員会により最高速度毎時40キロメートルと定められていたのであるから、これを遵守するとともに、前方を注視し進路の安全を確認して進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、カーステレオの音量調整に気をとられ前方不注視のまま漫然時速約80キロメートルの高速度で進行した過失により、自車と同一方向に進行中のB運転の普通貨物自動車を前方約49.7メートルの地点に初めて認め、直ちに急制動の措置を講じるとともにハンドルを右、左に転把して衝突を避けようとしたが及ばず、自車の右前部をB運転車輛の後部に追突させ、よつて、同人に対し、全治約2週間を要する頸部捻挫の傷害を負わせた

ものである。

(法令の適用)

第1及び第3の各事実につき 刑法第211条前段

第2の事実につき 道路交通法第64条、第65条第1項、第118条第1項第1号、第119条第1項第7号の2、同法施行令第44条の3

(上記保護処分を選択した事由)

1 本件が当裁判所に係属するまでの手続的な経緯の概要について

(1) 少年は、昭和61年2月22日午前8時45分ころ、前記(罪となるべき事実)第1記載の死亡事故を惹起したため、この事件を捜査した新潟地方検察庁検察官から同年3月18日、刑事処分相当の意見を付されて新潟家庭裁判所に同事件を送致された(当庁昭和61年少第565号)。新潟家庭裁判所は右事件について家庭裁判所調査官の調査(本籍照会、被害者照会、学校照会、少年及び保護者面接など)を経たうえ、同年4月17日、同事件を、少年法第20条により新潟地方検察庁検察官に送致する旨の決定をした。

(2) しかるに、少年は、上記検察官送致決定を受けて一か月も経つていない同年5月10日午前4時25分ころ、前記(罪となるべき事実)第2及び第3記載の道交法違反(無免許、酒気帯び運転)及び追突による人身事故を惹起して逮捕され、勾留を経て、同月21日、新潟地方検察庁新発田支部検察官から新潟家庭裁判所新発田支部に同事件を送致された。新潟家庭裁判所新発田支部は、即日、少年に対して観護措置決定をなしたうえ、同事件を新潟家庭裁判所に回付した(当庁昭和61年少第950号)。新潟家庭裁判所は、右事件につき、さらに精密な調査をしたうえ、同年6月16日、いわゆる身柄付きのまま同事件を新潟地方検察庁検察官に少年法第20条により送致する旨の決定をした。

(3) 新潟地方検察庁は、同年6月25日、上記(1)の犯罪事実を業務上過失致死、(2)の犯罪事実を道路交通法違反、業務上過失傷害として、少年を新潟地方裁判所に起訴した。これを受けた新潟地方裁判所刑事部は、同年7月21日の第1回公判期日から同年9月22日の第3回公判期日まで、三回の公判を重ねたうえ、同年9月29日、公訴事実の全てを認定したうえ、保護処分を相当とする理由で同事件を少年法第55条により新潟家庭裁判所に移送する旨の決定をした(なお、新潟地方裁判所では、右第一回公判期日前の同年6月30日少年に対し保釈決定をした。また、同公判裁判所は、公判審理にあたり、新潟家庭裁判所の少年調査記録の証拠調べをした形跡がない。)。

(4) 前記移送決定により、事件を受理して当裁判所は、直ちに家庭裁判所調査官の調査に着手してのち、同年10月29日、前記業務上過失致死の事実をもつて観護措置決定をしたうえ、本審判をするに至つたものである。

2 本件各犯行に至る経緯及び犯行の態様などについて

(1) 少年は、昭和59年2月17日、在籍高校の許可を受けないで、自動二輪免許を取得し、自動二輪車を乗り廻していたが、同月下旬には早くも定員外乗車の反則行為を犯して反則金を納付し、同年6月7日には、指定速度毎時50キロメートルのところを時速78キロメートルの高速で運転した違反を犯して免許停止30日の行政処分を受けたのち、新潟家庭裁判所に事件を送致され(同事件については、同年9月13日、講習を受けたうえ不処分決定となる。)、さらに、昭和61年1月30日、普通免許を取得して中古普通乗用自動車を入手し、そのハンドルをいわゆる小径ハンドルに取り換えたうえ、当時、高校卒業後の就職先も内定し、登校する必要も殆どなくなつていたところから連日に亘り、夜遅くまで右自動車を乗り廻わし、この間、しばしば制限速度を超える高速運転を試みたりしていた。

(2) 少年は、昭和61年2月22日夜、偶々自宅に遊びにきた友人のA(当18年)、C(当18年)及び少年の双子の兄Dと雑談していた際、全員で新潟市内○○方面に遊びに行くこととなり、少年運転の車輛助手席にAを、C運転車輛の助手席にDを同乗させて、同日午後8時20分ころ、それぞれ少年宅を出発した。少年は前記中古普通乗用自動車の助手席にAを同乗させて自宅から○○町方面に向けて発進し、同日午後8時45分ころ、新潟市○○町×丁目×番××号付近道路を○○方面から○○方面に向かつて進行したのであるが、同所付近の道路状況が右方に曲がる緩やかな上り坂で進路前方の見通しも困難であつたうえ、最高速度も毎時40キロメートルと指定されたところで、少年自身、このことを十分に知悉していたのであるから、指定速度を遵守するのは勿論、絶えず前方の安全を確認して進行すべきであつたのに、同所付近に差しかかるまでの間、数か所の信号機の設置されている交差点でいずれも赤信号のために停止を余儀なくされたことからいらだちを感じていたことと、当日、スノータイヤから通常のラジアルタイヤに取り換えたため、その性能を高速で試したいとの欲望にもかられて、同所付近に至る直近の交差点で赤信号のため停止し、青信号で発進するや、速度を速め、時速約80キロメートルの高速で同所付近に差しかかり、前記(罪となるべき事実)第1記載のとおり、前方約40.4メートルの地点に右折車輛のあることを初めて発見し、衝突の危険を感じて右に転把するとともに急制動の措置を講じたところ、ハンドル操作の自由を奪われて自車を右前方に暴走させ、道路右側の建物に激突させて、同乗させていたAに判示記載の重傷を負わせたうえ、翌23日午前0時40分死亡するに至らせたものである。

(3) 少年は、前記の死亡事故を惹起したことで、在籍高校からは停学一か月の処分を受け(このため、予定されていた卒業式に出ることができず、停学処分が切れたのち、校長室で卒業証書の授与を受けた。)、また、同年3月28日、免許取消の行政処分を受けたあと、事件を送致された新潟家庭裁判所からは、同年4月14日に家庭裁判所調査官の調査を父親とともに受け(少年は、この調査を受けた事実に関し、新潟地方裁判所の公判廷において、調査を受けた事実はなかつた旨供述している。)、同年同月17日、検察官送致の決定を受けた。少年は、同年同月20日ころから、かつてアルバイトをしたことのあるバイク店「○○」にバイク修理工として稼働する傍ら、親しくなつたE子等との夜遊びを繰り返していたところ、同年5月9日の夜、友人Fの運転する普通乗用自動車にE子ほか一名の女性と同乗して、シーサイドラインをドライブしたあと少年宅に戻り、翌10日午前2時ころから全員でビールを飲み、少年も約二本のビールを飲み終つて同日午前3時過ぎころ、新発田市内の自宅に帰りたいというE子を送り届けることとし、既に寝ていたFを起こして同人から自動車を借り受け、これにE子な同乗させて新発田方面に運転走行し、途中、時速100キロメートルを超す高速運転をするなどして、E子を同女宅前まで送り届け、自宅に引き返えす途中の同日午前4時25分ころ、前記(罪となるべき事実)第2記載の場所に差しかかつた際、カーステレオの音量調整に気をとられて前方注視を怠りながら時速約80キロメートルで走行し、ふと前方を注視すると、約49.7メートルの地点に同一方向に進行中のB運転の普通貨物自動車を発見し、衝突の危険を感じて急制動の措置を講じながら右、左と転把したが及ばず、自車前部をB運転車輛の後部に追突させてBに対し加療約2週間の頸部捻挫の傷害を負わせたものである。

以上に述べた本件各犯行に至る経緯、犯行態様及び重大な結果等に徴すれば、少年の刑責はまことに重大であるといわなければならず、普通免許取得年齢に達し、現に普通免許を取得したことのある少年が、その刑責を負うべきものであると考えることは、世人一般の見方とも大方一致するところということができるから、当裁判所としては、このための措置を講ずる途も制度上ないわけではないが、このことが少年の精神的安定及び自立的な更生に及ぼす影響等を考慮し、かつ後記の事由なども加味して、敢えて主文掲記の保護処分を選択した次第である。

3 少年の性格、行動傾向などについて

少年は、両親の過保護ともいえる養育態度の中で生育したためか、一見素直そうに見えるが、主体性に欠け、他に影響され易いうえ、自己洞察も乏しく、自己の起した事柄の重大性について真に反省しているかどうか疑わしい点があるのみならず、社会規範に対する認識も極めて甘いところがある。なお、少年は、今でもバイクに対する関心は極めて強いうえ、その交友関係についてみても、現に交通短期保護観察中の者や、交通事犯で家庭裁判所に係属したことのある者、あるいは現に係属中の者がかなり多く含まれているなどの問題点も無視できないところである。

4 保護者の指導監督能力について

両親は、揃つて子供の指導に熱心ではあるが、力が伴わない面がみられ、少年に対する指導監督能力は乏しいものといわざるを得ない。一例を挙げると、少年が昭和61年2月22日、前記(罪となるべき事実)第1記載の死亡事故を起こしたのに引き続いて、同年3月13日には少年の実兄Dが同乗者に加療3か月を要するほどの重大な交通事故を惹起したため、実父は、同年4月14日、少年とともに、また同年5月6日には実兄Dとともにそれぞれ当庁に出頭して、家庭裁判所調査官の調査を受け、その都度、少年及び実兄Dに厳重に注意を与えてきたというのであるが、同年5月10日には、少年が前記(罪となるべき事実)第2、第3の無免許、酒気帯び運転及び人身事故を惹起しているのであつて、この事実は、何よりも実父母等の少年に対する指導監督能力の乏しさを物語るものということができよう。なお付言すれば、実兄Dは前記人身事故の事件により交通短期保護観察に付され、現にこれが継続中のものであるところ、実父母は、本年10月、実兄Dの要求を容れて、車の購入を認めているのであつて、その指導能力のほどは、推して知るべきものがあるということができる。

5 結語

以上に述べてきた本件事案の重大性、性格、行動傾向のうえでの問題点、とりわけ、遵法意識の欠如と社会規範に対する認識の甘さ、内省、自己洞察が表面的に過ぎて浅いことなどに加えて、保護者の指導監護能力の低さなどの諸点を総合勘案すれば、もはや、在宅保護の余地はないものというべく、少年を少年院に収容して、組織的な矯正教育を加え、遵法精神を涵養することが必要であり、かつ相当であるといわなければならない。ただ、少年の非行が交通事犯に限られていることと、地方裁判所における公判審理に続いて、当裁判所による観護措置決定、調査、審判を受ける過程を通じて、徐々に己が刑責の重大性を自覚しはじめていること、及び少年が被影響性が強いことなどの点を考慮すると、少年院における長期処遇の必要はないものと認められるので、中等少年院送致の決定をするが、別途処遇勧告書のとおり、交通短期処遇を勧告するものである。

よつて、少年法第24条第1項第3号、少年審判規則第37条第1項を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 門馬良夫)

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